脂質って何ですか?
このような疑問にお答えします。
脂質や脂肪というと悪者にされがちです。
しかし、ランニングのエネルギー源にもなりますし、体を作っている細胞膜の材料にもなっており必要不可欠な栄養素です。
「脂質」は三大栄養素の一つであり、しっかりと理解することでマラソンのパフォーマンス向上につながります。
では、脂質って何ですか?
ということで、今回は「脂質」について説明していきます。
脂質とは
脂質は、水に溶けず、エーテル、クロロホルムなどの有機溶媒に溶ける性質があり、炭素・水素・酸素で構成されています。
また、脂質は、3大栄養素の一つであり「エネルギー源」になるだけでなく、「細胞膜の成分」「体温保持」「脂溶性ビタミンの供給」などの働きをします。
脂質は、体の中で消化されると「エネルギー源」として使われます。
「炭水化物」や「タンパク質」では「1gあたり4kcal」ですが、脂質は「1gあたり9kcal」となっており、三大栄養素の中で最も高いエネルギーとなります。
脂質は、体の中を構成する成分となります。
とくに人の体は約37兆個(以前は約60兆個と言われていた)もの細胞から出来ていますが、脂質はその細胞を構成している「細胞膜」の成分となっており、細胞の働きを維持しています。
また、「脂質」はホルモンなど体内の生理活性物質の主な材料となっており、体を構成するために重要な役割を担っているのです。
脂質によって、体温を保持したり、外部からのダメージを和らげる働きをします。
エネルギー源などに使われず、あまった脂質は、「皮下脂肪」や「内臓脂肪」として、蓄えられます。蓄えられた脂肪によって、体温を保持したり、外部からのダメージを和らげる働きがされるのです。
脂質は、ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの供給を助けます。
ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンは、油脂に溶けて存在しています。脂質が存在することで、脂溶性ビタミンの吸収を助けてくれるのです。
脂質不足の症状
脂質不足の症状として、エネルギー不足、冷え、脂溶性ビタミン不足、体内を調節する物質の不足などがあります。
脂質不足によって、エネルギー不足や体調不良から、パフォーマンス低下につながる可能性があるため注意が必要です。
脂質の分類
単純脂質
脂質の分類として「単純脂質」があります。
単純脂質は、「グリセロール」(グリセリン)と脂質の主成分である「脂肪酸」が結びついた脂質です。
グリセロール(グリセリン)は、3個の鎖状炭素原子のそれぞれに水酸基「-OH」の構造を3つもっている3価のアルコールの一種です。
食べ物の中に最も多く含まれている脂質である「中性脂肪」(トリアシルグリセロール)は、グリセロール(グリセリン)1分子に3個の脂肪酸が結合したものであり、「単純脂質」に分類されます。
食事で体内に取り込まれた「中性脂肪」は脂肪酸に分解されてエネルギー源となり、余剰分が体脂肪になります。
体内で脂肪組織として蓄えられ、いざという時のエネルギー源になります。
また、蛋白質と結合して「リポ蛋白質」となり血液中を循環します。
単純脂質の種類として、「中性脂肪」(トリアシルグリセロール)「コレステロールエステル」「ロウ」(ワックス)などがあります。
脂質の分類として「単純脂質」があります。
複合脂質
脂質の分類として「複合脂質」があります。
複合脂質は、「単純脂質」に、糖やリン酸、窒素化合物などが結びついた脂質です。
分子骨格として「グリセロ脂質」と「スフィンゴ脂質」があり、頭部構造として「リン脂質」と「糖脂質」に分けられます。
グリセリンを含むものを「グリセロリン脂質」、スフィンゴシンを含むものを「スフィンゴ脂質」と呼ばれます。
複合脂質は、細胞膜の構成成分となっており、体内の組織に広く分布しており、とくに脳組織に多く含まれます。
水にも溶ける性質があり、脂質などを血液内に運ぶリポタンパク質の材料にもなっている。
複合脂質の種類として、「ホスファチジルコリン(PC)」「ホスファチジルエタノールアミン(PE)」「ホスファチジルセリン(PS)」「ホスファチジルイノシトール(PI)」「ホスファチジルグリセロール(PG)」「カルジオリピン(CL)」「スフィンゴミエリン」などがあります。
脂質の分類として「複合脂質」があります。
誘導脂質
脂質の分類として「誘導脂質」があります。
誘導脂質は、単純脂質や複合脂質から生成される脂質です。
単純脂質や複合脂質が加水分解によって分解されてできる脂質です。
誘導脂質は、エネルギーの貯蔵、身体の構成、ホルモンの材料となる生理活性物質などの働きがあります。
誘導脂質の種類として「コレステロール」や「脂肪酸」があります。
脂質の分類として「誘導脂質」があります。
脂肪酸の種類
誘導脂質(単純脂質や複合脂質から生成されるもの)である脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に大きく分けられます。
「飽和脂肪酸」は、常温で固体になる性質があります。「バター」「ラード」など「脂」と表現されるものに多く含まれます。
一方、「不飽和脂肪酸」は、常温で液体になる性質があります。「オリーブオイル」「アマニ油」など「油」と表現されるものに多く含まれます。
「不飽和脂肪酸」には「一価不飽和脂肪酸」、「多価不飽和脂肪酸」(オメガ3系脂肪酸・オメガ6系脂肪酸など)、「トランス脂肪酸」などの種類があります。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、常温で固形のかたちである「脂」に含まれています。
飽和脂肪酸は、血液中の「中性脂肪」や「コレステロール」を増加させ、「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」につながります。
「バター」「ラード」「肉」「乳製品」などの動物性の脂質に多く含まれています。
飽和脂肪酸は、炭素の二重結合のないタイプの脂肪酸であり、常温で固体になる性質があります。
飽和脂肪酸は、炭素と炭素の間に二重結合がないタイプの脂肪酸です。
常温で固形になる性質があり、漢字で書くと「脂」と表現されます。
飽和脂肪酸は、体内で合成することができる脂肪酸であり、エネルギーとして使われやすいです。
主に、パルミチン酸・ステアリン酸・ミリスチン酸などの脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は、一般的に過剰摂取されやすく、健康への悪影響が知られています。
飽和脂肪酸を摂りすぎると、血液中の「中性脂肪」や「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を増加させ、「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」につながります。
飽和脂肪酸は動物性の食品に多く含まれます。
「肉類」「バター」「ラード」「生クリーム」「乳製品」「チョコレート」「ケーキ」などに多く含まれます。

短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸とは、炭素の数が6個以下の脂肪酸をいいます。
そもそも、脂肪酸とは、脂質を構成する成分のひとつであり、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしています。
そのうち炭素の数が6個以下のものを「短鎖脂肪酸」といい、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあります。
短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することにより生成されます。
「腸内環境の改善」「免疫力の向上」「体脂肪の減量」などの健康効果があります。
短鎖脂肪酸を増やすために「善玉菌を多く含む食品」や、「食物繊維」「オリゴ糖」などを含む食品を摂取しましょう。
とくに、ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物、味噌といった発酵食品などがオススメです。
中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸とは、炭素の数が6個から12個の脂肪酸をいいます。
よく「MCTオイル」を見かけるかもしれませんが、MCTは「Medium Chain Triglyceride」(中鎖脂肪酸)の略であり、MCTオイルは「中鎖脂肪酸油」のことをいいます。
中鎖脂肪酸には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸などがあります。
「中鎖脂肪酸」は、一般的な植物油に含まれる「長鎖脂肪酸」と比べて、消化吸収が早いです。
さらに、通常の脂質の代謝経路とは異なり、効率よく分解されて、エネルギー源として使われやすいです。
そのため、内臓脂肪や皮下脂肪などの体脂肪に蓄積されにくいという特徴があります。
また、脂質代謝が促されて、エネルギー源であるケトン体が産生され、空腹を感じにくくなり、食べ過ぎを予防する効果もあります。
中鎖脂肪酸は、ココナッツやパーム種子などのヤシ科の植物に含まれております。なお、母乳や牛乳にも含まれています。
長鎖脂肪酸
長鎖脂肪酸とは、炭素の数が12個以上の脂肪酸をいいます。
長鎖脂肪酸は、「飽和脂肪酸」だけでなく、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸などの「不飽和脂肪酸」なども含みます。
ここでは、長鎖脂肪酸に該当する飽和脂肪酸を見ていきます。ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などがあります。
飽和脂肪酸を摂取しすぎると、「中性脂肪」「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)の増加、動脈硬化・心筋梗塞などの循環器疾患のリスク、肥満・生活習慣病のリスクなどが上がります。
飽和脂肪酸は、一般的に過剰摂取されやすいため注意が必要です。
ただし、飽和脂肪酸は必要な栄養素でもあるため、適量の摂取を心がけましょう。
飽和脂肪酸は、乳製品、肉類、一部の植物油などに含まれております。
牛肉の脂身、豚肉の脂身、鶏肉の皮、バター、生クリーム、チーズなどの食品があります。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、炭素の二重結合があるタイプの脂肪酸であり、常温で液体になる性質があります。
不飽和脂肪酸は、炭素と炭素の間に二重結合があるタイプの脂肪酸です。
常温で液体になる性質があり、漢字で書くと「油」と表現されます。
炭素の二重結合が一つあるタイプを「一価不飽和脂肪酸」
炭素の二重結合が二つ以上あるタイプを「多価不飽和脂肪酸」と呼びます。
一価不飽和脂肪酸は、「オメガ9系脂肪酸」とも呼ばれており、比較的エネルギーとしては使われにくい脂肪酸です。
おもに、「オレイン酸」「ミリストレイン酸」「エイコセン酸」などがあります。
多価不飽和脂肪酸には、「オメガ3系脂肪酸」や「オメガ6系脂肪酸」があります。
「オメガ3系脂肪酸」は、調理油などに含まれる「アルファリノール酸」の他、魚類に含まれる「ドコサヘキサエン酸」(DHA)、「エイコペンタエン酸」(EPA)などがあります。
「オメガ6系脂肪酸」は、ほとんどは「リノール酸」であり「アラキドン酸」もあります。リノール酸やアラキドン酸は、体内では合成されない必須脂肪酸です。

一価不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、常温で液体のかたちである「油」に含まれています。
一価不飽和脂肪酸は、血液中の「コレステロール」を下げる作用があります。
「オリーブオイル」「なたね油」「動植物油脂」(オレイン酸を多く含む)などに多く含まれています。
多価不飽和脂肪酸
多価飽和脂肪酸は、血液中の「総コレステロール」を低下させ、「動脈硬化」の予防につながります。また、多価飽和脂肪酸を多くとりすぎると「HDLコレステロール」(善玉コレステロール)も低下してしまいます。
多価不飽和脂肪酸には、リノール酸などの「n-6系脂肪酸」(オメガ6脂肪酸)、リノレン酸・EPA・DHAなどの「n-3系脂肪酸」(オメガ3脂肪酸)などがあります。
「ごま油」「コーン油」「魚」「動植物油脂」(リノール酸を多く含む)などに多く含まれています。
オメガ3系脂肪酸
不飽和脂肪酸の種類として「オメガ3系脂肪酸」があります。
「オメガ3系脂肪酸」は、調理油などに含まれる「アルファリノール酸」の他、魚類に含まれる「ドコサヘキサエン酸」(DHA)、「エイコペンタエン酸」(EPA)などがあります。
「オメガ6系脂肪酸」は、ほとんどは「リノール酸」であり「アラキドン酸」もあります。リノール酸やアラキドン酸は、体内では合成されない必須脂肪酸です。
オメガ3系脂肪酸は、血液中の余分な「中性脂肪」や「総コレステロール」「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を下げる作用や、「HDLコレステロール」(善玉コレステロール)を上げる作用があり、「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」などの予防、心疾患リスクの低減につながります。
「オメガ3系脂肪酸」は、「さば」「うなぎ」「しそ油」「ごま油」「なたね油」「アマニ油」「あんこう」などに多く含まれています。
オメガ6系脂肪酸
不飽和脂肪酸の種類として「オメガ6系不飽和脂肪酸」があります。
「オメガ6系脂肪酸」は、ほとんどは「リノール酸」であり「アラキドン酸」もあります。リノール酸やアラキドン酸は、体内では合成されない必須脂肪酸です。
オメガ6系脂肪酸は、血液中の余分な「中性脂肪」や「総コレステロール」「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を下げる作用があり、「脂質代謝異常症」や「動脈硬化」などの予防につながります。
ただし、オメガ6系脂肪酸を多くとりすぎると、炎症反応を引き起こし、動脈硬化や心疾患のリスクを高める可能性があります。
また、アレルギー症状を悪化させたり、免疫機能に影響を与える可能性があります。
「オメガ6系脂肪酸」は、「サフラワー油」「ひまわり油」「大豆油」「コーン油」などに多く含まれています。
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、常温で液体である植物油に水素添加させて、人工的につくられた脂肪酸です。
トランス脂肪酸は、一般的に健康に悪い脂質として知られており、「食べるプラスチック」とも呼ばれています。海外では食品への「トランス脂肪酸」の使用が規制されている地域もあります。
トランス脂肪酸を摂りすぎると、血液中の「LDLコレステロール」(悪玉コレステロール)を増加させるだけでなく、「HDLコレステロール」(善玉コレステロール)を低下させます。
食品を製造する過程において、部分的に水素添加した油脂を用いて作られた、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などに、トランス脂肪酸が含まれています。
それらを使用した「カップ麺」や「スナック菓子」「ファストフード」などの加工食品にも含まれます。
脂質を含む食品
脂質を含む食品として「肉類」「魚類」「ナッツ類」「乳製品」「油脂類」などがあります。
肉類
牛もも…約18g(100g当たり)
豚ロース…約19g(100g当たり)
とりもも(皮あり)…約14g(100g当たり)
※部位や脂身・皮の有無などで大きく異なる
魚類
さば…約17g(100g当たり)
ぶり…約18g(100g当たり)
いわし…約9.2g(100g当たり)
ナッツ類
くるみ…約68.8g(100g当たり)
アーモンド…約51.8g(100g当たり)
カシューナッツ…約46.0g(100g当たり)
乳製品
牛乳…約3.8g(100g当たり)
ヨーグルト…約3.0g(100g当たり)
チーズ…約25g(100g当たり)
油脂類
えごま油…約100g(100g当たり)
あまに油…約100g(100g当たり)
オリーブオイル…約100g(100g当たり)
まとめ
今回は「脂質」について説明しました。
この記事によって「脂質」についての理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
この記事の著者
