・アスリートは食が大事と聞きますが、どうすればいいの?
・日々の食事で何か気をつけることありますか?
・速く走るために、食事をどうすればいいですか?
この記事を読むことによって、食事を武器にして、マラソンのタイムを伸ばすヒントが見つかります。
私はドクターランナーの立場として、トレーニング内容だけでなく食事・栄養バランスなどを記録して研究してきました。
自分自身を実験台にした結果、食事の内容が「走りの調子」と強く関係することを実感しております。

アスリートにとって日々の食事は非常に大切です。
食事にこだわることで、速く走ることにつながります。
速く走るためには、トレーニングだけではなく、食事・栄養などを味方につけることが大切です。
では、ランナーにとって、どのような栄養素が必要なのでしょうか?
今回は「ランナーに必要な栄養素」について説明します
ランナーに必要な三大栄養素
炭水化物
アスリートのための栄養のポイントとして「炭水化物」があります。
炭水化物とは、主に体の活動のエネルギーを産生する働きをします。
炭水化物の1日の必要量は「1日に必要なエネルギー量の50%~65%程度」となります。
炭水化物は、ごはん・パン・パスタ・麺類などの穀類、いも・でん粉類などに多く含まれています。
ちなみに、炭水化物は「白い炭水化物」と「茶色の炭水化物」があります。
茶色の炭水化物は、玄米・雑穀・全粒粉などおもに精製されていない炭水化物です。
食後の血糖値の急上昇を抑えてくれて、健康にも良いため、オススメします。
タンパク質
アスリートのための栄養のポイントとして「タンパク質」があります。
タンパク質は、主に体の構造をつくる働きをします。
1日に必要なタンパク質は「摂取エネルギーの13-20%」が理想とされています。
推奨量は成人男性で「1日60g」、成人女性で「1日50g」となっています。
マラソンランナーでは、「体重あたり約1.2g~1.7g」(体重60kgで72~102g)程度必要とします。
タンパク質は、「肉類」「魚介類」「卵類」「乳類」などの動物性タンパク質の他、「豆類」「穀類」などの植物性タンパク質があります。
特定の食品に偏らず、それぞれのタンパク質をバランスよく食べるようにしましょう。
脂質
アスリートのための栄養のポイントとして「脂質」があります。
脂質は、主に「体のエネルギー源」「体の構造をつくる」「体温を保持する」働きをします。
1日に必要な脂質は、「1日の必要エネルギーの13%から20%」が理想とされています。
脂質にはさまざまな種類がありますが、その中でも「良い脂質」と「悪い脂質」があります。
良い脂質として、「一価不飽和脂肪酸」「オメガ3系脂肪酸」「オメガ6系脂肪酸」などがあります。
たとえば、「さば」「サーモン」などの魚類、オリーブオイル・アマニオイルなどの油類、クルミ・マカダミアナッツなどの豆類などがあります。
ランナーに必要なビタミン
ビタミンB1
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンB1」があります。
ビタミンB1は、チアミンともよばれる水溶性ビタミンであり、ブドウ糖をエネルギーに変えるために欠かせない栄養素です。
ブドウ糖をエネルギーに変える過程において、
ブドウ糖→ピルビン酸(解糖系)
ピルビン酸→アセチルCoA→水・二酸化炭素+エネルギー(クエン酸回路)
という重要な過程があります。
ビタミンB1は、クエン酸回路において、ピルビン酸からアセチルCoAに変わるときに必要な成分となります。
ランナーにとって、ブドウ糖からエネルギーを生み出すことが重要になるため必須の栄養素と言えます。
ビタミンB1が不足すると、ブドウ糖を利用することができず、エネルギーが十分に産生されなくなり、疲労感・食欲低下・だるさなどの症状が起こります。
また、重症化すると脚気(浮腫・しびれ・動悸・息切れ)、ウェルニッケコルサコフ症候群(中枢神経障害)などにつながり、場合によっては死に至るケースもあります。
ビタミンB1は、豚肉・赤身肉・全粒穀物・ナッツ・大豆・カリフラワー・ほうれん草などの食品に含まれます。
ビタミンB6
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンB6」があります。
ビタミンB6は、水溶性ビタミンの一つであり、ビタミンB6活性をもつ化合物にはピリドキサール・ピリドキシン・ピリドキサミンの3つあり、アミノ酸(タンパク質)の代謝に欠かせない栄養素です。
ビタミンB6は、補酵素としてアミノ酸の代謝を助ける役割をします。
免疫機能、皮膚の正常化、赤血球のヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成、脂質の代謝などの働きをサポートします。
トレーニングにおいて、体づくりをする上で重要な栄養素になります。
ビタミンB12
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンB12」があります。
ビタミンB12は、水溶性ビタミンの一つであり、補酵素としてタンパク質や核酸の合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝、赤血球の形成を助ける働きなどをします。
とくに、赤血球を作る上で葉酸とともに重要な働きをします。
赤血球は、全身に酸素を運ぶ働きがありますが、長時間運動を持続するランナーにとって大切な存在となります。
ビタミンB12が不足すると、赤血球をうまく形作ることができず「巨赤芽球性貧血」につながります。
ビタミンB12は、しじみ・あさりなどの貝類、さんま・いわしなどの魚類、のりなどの藻類、豚肉・牛肉などの肉類、卵類、乳製品などの食品に多く含まれています。
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンB12」があります。
ビタミンC
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンC」があります。
「ビタミンC」は、鉄分の消化・吸収を助けてくれるため、鉄分と一緒に摂りたい栄養素です。
鉄分は、血液中の赤血球を構成している「ヘモグロビン」というタンパクを作るときに欠かせない栄養素です。
赤血球中の「ヘモグロビン」のおかげで、酸素を全身に運んでくれるのです。
鉄分が不足すると、鉄欠乏性貧血となってしまい、競技パフォーマンスは大幅に低下してしまいます。
また、赤血球が作られるときには、「鉄分」だけでなく「ビタミンB6」「ビタミンB12」「葉酸」などの栄養素も必要になるので、それらの摂取も意識しましょう。
さらに、ビタミンCには、皮膚や粘膜を健康的に保つ働き、高い抗酸化作用などがあります。
とくに、日差しが強い中で長時間のランニングを行ったときには、紫外線や酸化ストレスを受けてしまいます。
そんな時には、ビタミンCを積極的に摂取して、酸化ストレスに打ちかちましょう。
ビタミンCは、キウイフルーツ(とくに黄色)・いちご・みかんなどの「果物」、パプリカ・キャベツ・ブロッコリーなどの「野菜」などに多く含まれます。
ビタミンD
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンD」があります。
ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一つであり、腸管からのカルシウムの吸収や、腎臓でのカルシウムの再吸収をする働き、テストステロン分泌を促し筋肉の合成を促進する作用などがあります。
肝臓や腎臓を経て活性化したビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収や、腎臓でのカルシウムの再吸収をする働きをします。カルシウムは筋収縮を促すため、ビタミンDがサポートしてくれます。
また、ビタミンDの摂取によってテストステロン分泌を促進する働きがあるという報告があり、筋肉の合成を促してくれることが期待できます。
なお、ビタミンDは、日光に当たると体内で合成されるため、適度に日光に当たることも大切となります。
ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一つであり、腸管からのカルシウムの吸収や、腎臓でのカルシウムの再吸収をする働き、テストステロン分泌を促し筋肉の合成を促進する作用などがあります。
ビタミンE
ランナーに必要な栄養素として「ビタミンE」があります。
ビタミンEは、脂溶性ビタミンの一つであり、「4種のトコフェノール」と「4種のトコトリエノール」の合計8種類の化合物の総称です。
ビタミンEは、強い抗酸化作用をもち、体内の脂質の酸化を防いでくれます。とくに血管をキレイにする働きがあり、動脈硬化や血栓の予防効果があります。また、血圧の低下、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の低下、細胞膜を健康に保つ働きもあります。
トレーニングにおいて、血液の循環を促進し、筋肉への栄養供給をスムーズにします。
ビタミンEは、ひまわり油・小麦胚芽油・ベニバナ油などの植物油、アーモンド・ヘーゼルナッツなどのナッツ類、モロヘイヤ・西洋かぼちゃ・赤ピーマン・大根の葉・豆苗・かぶの葉・菜の花などの野菜に多く含まれています。
ランナーに必要なミネラル
鉄分
ランナーに必要な栄養素として「鉄分」があります。
鉄分は、血液中の赤血球を構成している「ヘモグロビン」というタンパクを作るときに欠かせない栄養素です。
赤血球中の「ヘモグロビン」のおかげで、酸素を全身に運んでくれるのです。
鉄分が不足すると、鉄欠乏性貧血となってしまい、競技パフォーマンスは大幅に低下してしまいます。
鉄分が多く含まれる食品として、動物性食品と植物性食品があります。
動物性食品は、体内への吸収率の高い「ヘム鉄」が豊富に含まれています。
具体的な食品でいうと、「豚レバー」「鶏レバー」「牛レバー」、「まぐろ」「かつお」「めざし」、「たまご」「あさり」「カキ」などが挙げられます。
植物性食品には、「非ヘム鉄」が主に含まれています。
具体的な食品でいうと、「こまつな」「ほうれんそう」「春菊」、「大豆」「えだまめ」「そらまめ」、「ひじき」などが挙げられます。
「ビタミンC」は、鉄分の吸収を助けてくれるため、鉄分と一緒に摂りたい栄養素です。
また、赤血球が作られるときには「ビタミンB6」「ビタミンB12」「葉酸」が必要になるので、それらの摂取も意識しましょう。
カルシウム
ランナーに必要な栄養素として「カルシウム」があります。
「カルシウム」は、人が必要とする「ミネラル」の一種であり、体重の1-2%程度含まれています。
カルシウムの「99%」はリン酸と結合した「リン酸カルシウム」として「骨」「歯」などに存在し、その材料となっています。「残り1%」は「筋肉」「血液」「神経」などに存在しています。
カルシウムには、筋肉の収縮、神経の伝達をスムーズにする役割があります。
神経や筋肉を使って体を動かしますが、ランナーにとって必須の栄養素となります。
なお、カルシウムは、筋肉において「カルシウムイオン」として存在しています。カルシウムの働きで、筋肉の収縮がスムーズに行われ、筋肉の過剰な収縮を抑える働きをします。
また、カルシウムは、神経において「カルシウムイオン」として存在し、神経伝達がスムーズに行われます。全身の神経伝達が安定し、神経や筋肉の過剰な興奮も抑えられます。
さらに、カルシウムには「精神を落ち着かせる効果」「血液を固めるのを促す作用」などがあります。
カルシウムは、「牛乳」「乳製品」(チーズ・ヨーグルトなど)、「小魚」「海藻」(いわし・しらす・ひじき・わかめ・のりなど)、「豆」「大豆製品」(だいず・豆腐・納豆・湯葉など)
「野菜」(小松菜・ちんげんさい・菜の花など)に含まれます。
カリウム
トレーニングに必要なミネラルとして「カリウム」があります。
トレーニングにおいて、カリウムは、筋肉の収縮に加え、神経伝達にも関係しています。
また、カリウムは、体液のバランスの維持にも関係しています。
カリウムが不足すると、頭痛・めまい・疲労感・しびれなどの症状、不整脈・高血圧などを起こします。
カリウムは、果物、野菜、芋類、豆類(大豆、大豆製品など)、牛乳・乳製品(ヨーグルトなど)、種実類(ピーナッツ、アーモンドなど)などに多く含まれています。
マグネシウム
ランナーに必要な栄養素として「マグネシウム」があります。
マグネシウムは、骨の構成成分になったり、タンパク質の合成・筋肉の収縮・神経の伝達などに関係しています。
マグネシウムが不足すると、イライラ・手足のふるえ・不整脈・歯の形成不全などの症状、重度になると「けいれん」を起こす場合もあります。
マグネシウムは、きぬあ・そば・全粒粉・玄米などの「穀物」、大豆・大豆製品、ごま・アーモンド・くるみ、あおさ・ひじき・のりなどの「海藻類」、だいこん・ほうれんそう・などの「野菜」、バナナなどの「果物」、きくらげ・しいたけ・えのきなどの「きのこ類」などに多く含まれます。
亜鉛
ランナーに必要な栄養素として「亜鉛」があります。
「亜鉛」は、微量ミネラルの一つです。
亜鉛は、滋養強壮に良いとされており、疲労回復を促す栄養として有名です。それ以外にも味覚を正常に保ったり、免疫力を高める効果があります。
亜鉛が不足すると、味覚障害になったり、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなります。
他にも、皮膚炎、口内炎、脱毛症、食欲低下、生殖機能の低下、慢性下痢、神経感覚障害、認知機能障害などがおこります。
亜鉛は、カキ・ほたて・煮干しなどの魚介類、牛肩ロース・牛もも肉・鶏レバーなどの肉類、ナッツ類などの食品に多く含まれています。
ナトリウム
ランナーに必要な栄養素として「ナトリウム」があります。
ナトリウムは、主要ミネラルの一つです。
ナトリウムは、体液のバランスの維持・神経の伝達・食欲の増進などに関係しています。
ナトリウムが不足すると、吐き気・頭痛・めまい・疲労感などの症状、血圧低下などを起こします。
反対にナトリウムを過剰に摂取すると、高血圧につながり、循環器疾患のリスクが高まります。
日本人は、塩分を摂り過ぎがちであり、通常の食事においてはナトリウムが不足することはありません。
ただし、アスリートで夏場激しいトレーニングを行った時に、汗からナトリウムなどのミネラルが大量に喪失してしまうことがあります。
そのような場合には、スポーツドリンクなどで積極的に補給するように心がけましょう。
ヨウ素
ランナーに必要な栄養素として「ヨウ素」があります。
ヨウ素(I)は、微量ミネラルの一つです。
ヨウ素のほとんどは、甲状腺に存在して、甲状腺ホルモンをつくるために必要です。
甲状腺ホルモンは体の代謝を活発化する効果があり、いわゆる元気を出してくれます。
ヨウ素が不足すると、甲状腺ホルモンが不足するため、元気がなくなり活動性が低下し、競技パフォーマンスの低下につながります。
重度になると、甲状腺機能低下症になり、浮腫・声がれ・精神機能障害・皮膚の乾燥・体重増加などの症状が起こります。
昆布・ひじき・のり、めかぶ、もずくなどの海藻類、ヨード卵、寒天などの食材に多く含まれています。
ランナーに必要な栄養素
クエン酸
ランナーに必要な栄養素として「クエン酸」があります。
クエン酸は、体内の乳酸を分解してエネルギーを生み出すのに必要な成分です。
運動を行うと、乳酸が産生して蓄積し、体内が酸性に傾くため、疲労を感じます。
クエン酸を摂取することで、乳酸を分解して、エネルギーを生み出してくれて、疲労回復を促進してくれます。
とくに長時間の運動で疲労することが多いランナーやアスリートにとって重要です。
さらに、クエン酸は、「ミネラルの吸収促進」「血栓症の予防」などの効果もあります。
クエン酸は、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、キウイ、梅干し、お酢など、酸っぱい食品に多く含まれています。
なお、クエン酸は、糖質と一緒に摂取すると、疲労が溜まりにくくなるのに加え、酸っぱさも軽減できるのでおすすめです。
ランナーに必要な栄養素として「クエン酸」があります。
まとめ
今回は「ランナーに必要な栄養素」について説明しました。
われわれの体は「食べたもの」から出来ています。
そして、アスリートは「体」が資本です。
「医食同源」という言葉があるように「食」というものはとても重要です。
スポーツでさらなる高みを目指している人は、日々の食生活を見直してみましょう。
この記事によって「ランナーに必要な栄養素」についての理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
この記事の著者
