糖質を摂取するポイント【ランナーの栄養学】糖質のエネルギーを利用して速く走る

・もっと速く走りたいです!
・アスリートは食事が大事と聞きますが、どうすればいいの?
・糖質が大事だと聞きましたが、どのように摂ればいいですか?

この記事を読むことによって、食事を武器にして、マラソンのタイムを伸ばすヒントが見つかります。

私はドクターランナーの立場として、トレーニング内容だけでなく食事・栄養バランスなどを記録して研究してきました。
自分自身を実験台にした結果、食事の内容が「走りの調子」と強く関係することを改めて実感しました。
とくに、糖質の摂取量が多い場合と少ない場合で、明らかに違いが表れます。

エネルギー源に特化した栄養素である「糖質」
糖質を適切に摂取することで速く走ることにつながります。

糖質を武器にできると、きっと自己ベスト更新につながるでしょう。

では、どのように糖質を摂取すればいいですか?

ということで、今回は「糖質を摂取するポイント」について説明していきます。

糖質の摂取量

1日の糖質摂取量

アスリートの糖質摂取量は
「体重×6g~12g/日」が目安

高強度~かなり高強度トレーニング
(アスリートのための糖質摂取ガイドライン)

体重60kgの場合、1日に必要な糖質量は「360~720g」(1440~2880kcal)程度になります。

白米100gあたりの糖質は「約35g」含まれるため、「白米1kg~2kg」に相当します。
強豪校では、白米を1日2kg以上食べるように指導されるケースもあるようですが、それに匹敵する量になります。

一般人(男女とも)の糖質摂取量は「1日に必要なエネルギーの50~65%」
(2020年度 日本人の食事摂取基準)

一般成人男性では、1日に必要なエネルギー量の目安は「2000~2700kcal」(活動量や体格などによる)であるため、
1日の糖質摂取量は「250g~440g」(1000kcal~1750kcal)程度となります。

このように、アスリートの場合、激しいトレーニングをするため、一般人に比べると必要となる糖質の量は多くなります。

ただし、これは糖質の摂取量の目安であり、競技内容やトレーニング内容、トレーニング時期、それぞれの身長・体重などの体格によって、糖質を摂取すべき量は異なります。
ご自身にあった糖質の摂取量を見つけることが大切です。

トレーニング前の糖質摂取

トレーニング前には、糖質を十分に摂取し、エネルギーをチャージすることによって、トレーニングの質を高めることができます。

トレーニングの2~3時間前では、通常の食事や軽食などによって補給しましょう。
とくに、主食である、白米、パン、そばなど麺類など活用しましょう。

トレーニングの1~2時間前では、消化に良い果物や間食などによって補給します。
とくに、バナナやサツマイモ、大福などの和菓子はオススメです。

トレーニングの30分~1時間前では、消化が速いゼリーや液体ドリンクを利用します。
スポーツ用のエネルギージェルや、スポーツドリンク、ブドウ糖ダブレットなどオススメです。

トレーニング中の糖質摂取

長時間のトレーニングやレース中の糖質摂取は、

・1時間あたり約60g

を目安に糖質を摂取することが、パフォーマンスを維持するために、すすめられています。

マラソンレースであれば、給水やエイドを利用して補給しましょう。
トレーニングでも、ジェルやドリンクなどを準備して、定期的に糖質や水分を補給するようにしましょう。

トレーニング後の糖質摂取

トレーニング後の糖質摂取は、

・トレーニング後、1時間以内→体重1kgあたり「約1~1.2g」
・トレーニング後、4時間以内→体重1kgあたり「約1~1.2g/1時間」

を目安に補給しましょう。

トレーニング後の糖質が不足すると、リカバリー不足に陥る可能性があります。
さらに、エネルギー不足から筋肉などのタンパク質が使われてしまい、コンディションが悪化するおそれがあるので注意しましょう。

糖質を多く摂るコツ

洋食より和食を

洋食には、バター、油、揚げ物などが使われている料理が多く、脂質の摂取が多くなりがちです。
一方、和食では「1汁3菜」を基本としており、「ごはん」と「おかず」がメインです。
糖質の量は、主食のごはんで調整することができますし、低脂質で、タンパク質やビタミン、ミネラルなど栄養成分をバランス良く摂取できます。

1汁3菜で栄養バランス良好
・主食…ごはんなど、糖質を摂取できる
・主菜…おかず(魚、肉、卵料理など)、タンパク質・脂質を摂取できる
・副菜…サラダなど、ビタミン・ミネラルなどを摂取できる
・汁物…みそ汁など、ビタミン・ミネラルなどを摂取できる

和菓子より洋菓子を

洋菓子には、バター、卵、生クリームなどが使われていることが多く、脂質が多くなりがちです。
一方、和菓子は、小豆(あずき)を使用しているものが多く、低脂質で高糖質のものが多いです。
個人的には、「ようかん」「大福」「だんご」、少し脂質が含まれますが「カステラ」「どら焼き」などがオススメです。

菓子パンよりもシンプルなパンを

菓子パンでは、生地に牛乳やバターなどが練りこまれていることがあり、脂質は多くなりがちです。
また、チョコレートやクリームなどが含まれていると脂質は多くなります。

材料が、小麦粉・酵母・水などのシンプルな材料で作られているパンであれば、脂質を抑えてパンを食べることができます。
個人的には、ベーグル、フランスパン(バケット)、全粒粉パン、リュスティック、シンプルな食パンなどは、低脂質でオススメです。

ファストフード、スナック菓子は控える

ファストフード、スナック菓子には、脂質が多く含まれており、控えた方がいいでしょう。

とくに、ハンバーガーは、全体のカロリーは、肉のタンパク質と脂質がメインであり、パンズの糖質の比率が低くなっています。

また、フライドポテトは、ジャガイモに糖質が含まれていますが、揚げた分、脂質が多く含まれます。
ポテトチップスなどのスナック菓子も同様です。
タンパク質は、ほとんど含まれておらず、塩分も多いため、アスリートは控えるべきでしょう。

糖質を摂取する注意点

糖質の種類

糖質を摂取する注意点として「糖質の種類」があります。

糖質の種類として「単糖類」から「二糖類」「少糖類(オリゴ糖)」「多糖類」などがあります。
これらの順番に、構造が複雑になるため、消化までの時間がかかります。
つまり、「単糖類」が一番消化が早く、「多糖類」が消化に時間がかかります。

トレーニングまでに時間が空く場合には、多糖類であるデンプンを含む「ごはん」や「小麦製品(パン・パスタ・うどんなど)」「そば」などがオススメです。
トレーニング前には、果糖が含まれる果物、砂糖(ショ糖)やブドウ糖、マルトデキストリンなどが含まれるゼリー飲料やスポーツドリンクが良いでしょう。

ちなみに、単糖類の「果糖」は、すぐにエネルギーとして利用されやすく、インスリン分泌と関係なく反発性の低血糖が起こりにくいため、運動前の補給でオススメします。

一方、単糖類の「ブドウ糖」が含まれると、摂取した後、血糖値を下げるためインスリンが分泌します。糖質の量が多くタイミングが悪いと、トレーニング中に低血糖発作(大福餅症候群)が起きる可能性があり注意が必要です。

GI値

糖質を摂取する注意点として「GI値」があります。

GI値とは「Glycemic Index」の略であり、食事をした後の血糖値の上昇度を表す指標のことです。

トレーニング前後ですぐに糖質が必要な場面では、比較的GI値が高いものを。
普段の食事では、比較的GI値が低いものを選びましょう。

なお、血糖値の急上昇、急下降のことを「血糖値スパイク」と呼ばれますが、糖尿病など生活習慣病リスク、免疫力低下、認知機能の低下など様々な健康面への影響があります。

普段の食事の中で
・糖質を最後に食べること
・よく噛んで食べること
・GI値の低い食品を選ぶこと

一日全体の流れで
・トレーニング前後に糖質を多めに摂取する
・間食などで食事回数を増やす

などの工夫によって、血糖値スパイクをおさえて、糖質を摂取することができます。

ビタミンB1不足

糖質を摂取する注意点として「ビタミンB1不足」があります。

ビタミンB1は、糖をエネルギーに変えるために欠かせない栄養素です。

糖質を多く摂取してエネルギーが産み出されると、ビタミンB1が消費されてしまいます。
ビタミンB1が不足すると、糖をエネルギーに変換することができず、疲労感・食欲低下・だるさなどの症状が起こります。

糖質を多く摂取するときには、ビタミンB1不足に陥らないように注意しましょう。

糖尿病

糖質を摂取する注意点として「糖尿病」があります。

アスリートでは、糖質の必要量が高くなるとはいえ、糖質を摂取しぎると「糖尿病」になる可能性があります。

糖尿病は、初期には症状が出ないことが多いため、とくに注意が必要な病気です。
症状が出るころには、進行しているケースがあります。

糖質を多く摂取する時には、できれば定期的に血液検査を行い、「血糖値」や「HbA1c」などを確認すると良いでしょう。
また、市販のリブレなどの血糖値モニタリング装置を使用して、血糖値管理することをオススメします。

糖質を含む食品

穀物類

白米…約33g(100g当たり)
・食パン…約26g(60g当たり)

・そば(ゆで)…約48g(200g当たり)
・小麦粉…約73g(100g当たり)
・うどん(ゆで)…約52g(250g当たり)

芋類

さつまいも…約30g(100g当たり)
・じゃがいも…約16.3g(100g当たり)
・長芋…約13g(100g当たり)

砂糖類

砂糖(ショ糖)…約8.9g(9g当たり)
・はちみつ…約16.7g(21g当たり)
・水あめ…約17.9g(21g当たり)

果物類

バナナ…約21.4g(100g当たり)
いちご…約5.3g(75g当たり)
りんご…約35g(250g当たり)

菓子類

・どら焼き…約55.6g(100g当たり)
・カステラ…約31g(50g当たり)
・ようかん…約33.5g(50g当たり)

まとめ

今回は「糖質を摂取するポイント」について説明しました。

自分にとって最適な「糖質の摂取量」を見定めて、糖質のエネルギーを活用し、自己ベスト更新につながることを心より願っています。

この記事によって「糖質を摂取するポイント」についての理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。

この記事の著者

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