女性アスリートの三主候【骨の健康】疲労骨折を予防して競技を楽しむ

・走りすぎて、足が痛みます。
・実は疲労骨折してしまいました

・骨折しないためにどうすればいいですか?

この記事を読むことによって、骨の健康管理について知ることができ、骨折を予防して長く競技を楽しむことができます。

私はドクターランナーの立場として、ランナーの健康管理に携わってきました。
とくに、ハードなトレーニングを行っている女性アスリートにおいて、疲労骨折をすることが少なくないです。

女性アスリートは「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」などの健康問題で悩まされるケースが多々あります。

では、骨折せずに、トレーニングを続けるためにはどうすればいいのでしょうか?

ということで今回は「女性アスリートと骨の健康」について説明します。

女性アスリートの三主徴と骨の健康

「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」の3つを「女性アスリートの三主徴」とよばれています。

「エネルギー不足」から「骨粗しょう症」につながります。
また、「エネルギー不足」によって「無月経」が起こり「骨粗しょう症」につながります。
「骨粗しょう症」の状態で、トレーニングなどによる過剰な負荷がかかると「疲労骨折」などが起こります。

では、「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」の女性アスリートの三主徴を中心に「骨の健康」についてみていきましょう。

骨折の原因

エネルギー不足

骨折の原因として「エネルギー不足」があります。

正確にいうと「利用可能エネルギー不足」によって骨折しやすくなります。

「利用可能エネルギー」とは、食事などからとる「摂取エネルギー」から運動による「消費エネルギー」を引いた残りのエネルギーのことをいいます。
日常生活の活動・基礎代謝・生命維持活動などに使えるエネルギーにあたります。

「利用可能エネルギー」が不足すると、骨を十分につくることにエネルギーを回せず、「骨粗しょう症」につながり、疲労骨折しやすくなります。

女性ホルモンの低下

骨折の原因として「女性ホルモンの低下」があります。

「利用可能エネルギー」が不足すると、月経を調整するホルモンの分泌が低下し、卵巣から分泌される「女性ホルモン」(エストロゲン)も低下します。

女性ホルモンの低下によって「無月経」が起こるだけでなく、「骨粗しょう症」にもつながり(女性ホルモンには骨を強くする働きがあり)、「骨折」しやすくなります。

オーバーユース

骨折の原因として「オーバーユース」(使いすぎ)があります。

通常の「骨折」では、交通事故や転落事故など一度に大きな力が骨に加わることで起こります。
それに対して、アスリートなどでおこる「骨折」は、軽微な力が繰り返し加わることで起こる「疲労骨折」が多いです。

トレーニングによる「オーバーユース」によって、骨の同じ部分に継続的に負荷がかかると「疲労骨折」につながります。

ちょうど、金属がくりかえし曲げ伸ばされると折れてしまう「金属疲労」のような状態が骨にも起こるのです。
ちなみに、軍隊の行軍訓練で「中足骨」という足の骨が折れやすいことが有名であり「行軍骨折」ともよばれています。

疲労骨折の好発部位

ランナーの疲労骨折が起こりやすい部位として、以下の通りです。

・中足骨(足の骨)
・脛骨(すねの骨)
・腓骨(すねの外側の骨)
・恥骨
・仙骨

骨折を予防するポイント

適度なトレーニング

骨折を予防するポイントとして「適度なトレーニング」があります。

骨は、適度な刺激が加わることによって、強く保たれます。
ただし、激しいトレーニングや運動のやりすぎは「疲労骨折」につながるので注意が必要です。

現実には競技パフォーマンスを上げるトレーニングとの見定めは難しいですが、女性アスリートの骨折予防として、無理がかかり過ぎる過度なトレーニングを避けて、「適度な負荷のトレーニング」を行いましょう。

規則的な月経周期

骨折を予防するポイントとして「規則的な月経周期」があります。

月経周期が整っているかどうかということが、骨の健康と関係しております。
「エストロゲン」(女性ホルモン)は骨の健康には欠かせないホルモンです。
脳から分泌される月経を調節しているホルモンが低下し、卵巣からの「エストロゲン」の分泌も低下すると「無月経」や「生理不順」につながります。さらに、「エストロゲン」の分泌が低下すると「骨粗しょう症」にもつながります。
骨の健康のために「生理周期が整っていること」が重要です。

適切な食事

骨折を予防するポイントとして「適切な食事」があります。

まずは、エネルギー不足にならないように、トレーニング量に見合ったエネルギーを食事から摂取するようにしましょう。

また、食事から摂取された栄養素が「骨の材料」となります。
骨は「リン酸カルシウム」と「コラーゲン」が主な構成成分です。
「カルシウム」や「タンパク質」「ミネラル」などを材料にして「骨」はつくられます。

では、骨折を予防するために食事について具体的にみていきましょう。

骨折を予防する食事のポイント

エネルギー

骨折を予防する食事のポイントとして「エネルギー」があります。

「エネルギー不足」によって「無月経」や「骨粗しょう症」につながるため、食事からしっかりとエネルギーを取ることが大切です。

アスリートは日々のトレーニングによって消費エネルギーも増えています。
運動量に見合ったエネルギーを食事から摂取しましょう。

足りないようであれば、3食以外にも間食をとるなどの工夫も必要です。

カルシウム

骨折を予防する食事のポイントとして「エネルギー」があります。

骨は、「リン酸カルシウム」と「コラーゲン」から主に構成されており、骨の材料として「カルシウム」は重要です。
ただし、カルシウムは、不足しがちで、吸収効率も悪いために、意識して摂取するようにしましょう。

カルシウムは、「小魚」「乳製品」などに多く含まれています。

マグネシウム

骨折を予防する食事のポイントとして「マグネシウム」があります。

カルシウムとともに、マグネシウムも骨を作る上で欠かせない栄養素です。

マグネシウムはカルシウムとともに、「小魚」「乳製品」、「小松菜」などの緑黄色野菜に多く含まれています。

タンパク質

骨折を予防する食事のポイントとして「タンパク質」があります。

骨のしなやかな強さを保つための「コラーゲン」は、「タンパク質」と「ビタミンC」から作られています。
タンパク質は、質の高いものを、適切な量を意識して摂取するようにしましょう。
ただし、タンパク質を摂り過ぎると、カルシウムが尿中に排泄されてしまうため、「タンパク質の摂り過ぎ」には注意しましょう。

ビタミンC

骨折を予防する食事のポイントとして「ビタミンC」があります。

くりかえしですが、骨のしなやかな強さを保つための「コラーゲン」は、タンパク質だけでなく「ビタミンC」も必要です。

ビタミンCは、コラーゲンの材料になるだけでなく、「抗酸化作用」や「免疫力を上げる」効果もあるため、アスリートにとって必要な栄養素となります。

ビタミンCは、「野菜」「果物」に多く含まれております。

ビタミンD

骨折を予防する食事のポイントとして「ビタミンD」があります。

「ビタミンD」は、「カルシウム代謝」以外にも「筋力や脂質代謝」「血圧の調整」、また「動脈硬化」「自己免疫疾患」などに関わっています。

ビタミンDは、「魚」「卵」「乳製品」に多く含まれています。また、日光を浴びることで合成されます。

ビタミンK

骨折を予防する食事のポイントとして「ビタミンK」があります。

ビタミンK不足は、骨折の危険性を高めることが知られております。
ビタミンKは、「緑黄色野菜」や「納豆」に多く含まれています。

まとめ

今回は「女性アスリートと骨の健康」について説明しました。

・アスリートは、月経が来ないのは当たり前だ!
・体重が増えたら、動きが鈍くなる…
・疲労骨折するくらい練習しなければ!?

などと間違った考えの指導者も多いのも事実です。

疲労骨折などケガをすると、トレーニングがしばらくの間できなくなり大変キツイ時期を過ごすことになります。
若い世代のアスリートが、長くスポーツを楽しめるように、ご自身の体を大切にして頂ければ幸いです。

この記事によって「女性アスリートと骨の健康」の理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。

この記事の著者

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