・トレーニングがハードです…
・気がついたら月経が来ていません。
・月経が来ないでも大丈夫ですか?
この記事を読むことによって、女性アスリートの無月経について知ることができ、健康的に長く競技を楽しむことができます。
私はドクターランナーの立場として、ランナーの健康管理に携わってきました。
とくに、ハードなトレーニングを行っている女性アスリートにおいて、無月経になるケースが少なくないです。

女性アスリートは「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」などの健康問題で悩まされるケースが多々あります。
なぜ女性アスリートは無月経になるのでしょうか?
そして、無月経の場合には、どうすればいいのでしょうか?
ということで今回は「女性アスリートの無月経」について説明します。
女性アスリートの三主徴と無月経
「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」の3つを「女性アスリートの三主徴」とよばれています。
エネルギー不足の状態では、月経が正常に来るために必要なエネルギーを回すことが出来ずに「無月経」になります。
なお、「エネルギー不足」から「骨粗しょう症」につながります。
また、「エネルギー不足」によって「無月経」が起こり「骨粗しょう症」につながります。
では、今回は女性アスリートの三主徴の一つ「無月経」についてみていきましょう。
無月経とは
そもそも、無月経には、「原発性無月経」と「続発性無月経」があります。
18歳になっても「初めての生理」(初潮)がこない状態のことを「原発性無月経」とよばれます。
実際には15歳を過ぎても初潮がこないと「遅発月経」とよばれ、原因を検査することが多いです。
なお、今まであった月経が3ヶ月以上停止した状態のことを「続発性無月経」とよばれます。
そして、運動が原因で「無月経」になったものを「運動性無月経」ともよばれます。
とくに、女性アスリートの場合は、初潮が来ない場合、「運動性無月経」が原因として隠れている場合があります。
無月経の原因
エネルギー不足

無月経の原因として「エネルギー不足」があります。
正確にいうと、「利用可能エネルギー不足」によって無月経となります。
「利用可能エネルギー」とは、食事などからとる「摂取エネルギー」から運動による「消費エネルギー」を引いた残りのエネルギーのことをいいます。
この「利用可能エネルギー」は、日常生活の活動・基礎代謝・生命維持活動などに使うことができるエネルギーにあたります。
「利用可能エネルギー」が不足すると、少ないエネルギーを有効活用するために体の中の生命活動の一部を縮小する方向になります。
月経に関する活動もおさえられるようになり「月経異常」や「無月経」などにつながります。
つまり、「利用可能エネルギー不足」によって女性アスリートは「無月経」となるのです。
体重減少

無月経の原因として「体重減少」があります。
極端なダイエットなどで無月経が起こる場合があり、「体重減少性無月経」として知られています。
月経にはさまざまなホルモンが重要です。
具体的にいうと、脳の視床下部という場所にある「下垂体」から、月経に関与する「ホルモン」が分泌されます。
そして、卵巣に作用して、月経周期を作り上げるホルモンが分泌されます。
極端なダイエット、過度なトレーニングなどで、急激な体重減少がおこると、脳の下垂体から分泌されるホルモンのバランスが乱れ、「月経異常」や「無月経」につながります。
つまり、「体重減少」によってホルモンバランスが乱れて、女性アスリートは「無月経」となるのです。
ストレス

無月経の原因として「ストレス」があります。
身体的、精神的にストレスがかかると、無月経が起こる場合があります。
くりかえしですが、月経には脳から分泌されるホルモンが関与しております。
脳でストレスを感知すると、月経に関与するホルモンのバランスが乱れ、「月経異常」や「無月経」につながります。
女性アスリートの場合、試合やレースに向けて、高いパフォーマンスを発揮できるように、厳しいトレーニングが行われます。
要求されるレベルが高くなるほど、身体的・精神的なストレスが重くのしかかります。
さらに、競技生活をする上で、「食生活」「住空間」「寝る時間」「起きる時間」など日常生活も制約を受ける場合が多いです。
つまり、女性アスリートは「ストレス」によってホルモンバランスが乱れて、「無月経」となるのです。
婦人科・内分泌疾患
無月経の原因として「婦人科・内分泌疾患」があります。
とくに「多嚢胞性卵巣症候群」「卵巣機能不全」「甲状腺異常」などの疾患で無月経をきたすことがあります。
エコー検査や、ホルモン値の血液検査などによって、診断することができます。
無月経の影響
骨粗しょう症

無月経の影響として「骨粗しょう症」があります。
卵巣から分泌される「女性ホルモン」(エストロゲン)が低下すると、「無月経」が起こるだけでなく、「骨粗しょう症」につながります。これは、女性ホルモンには骨を強くする働きがあるからです。
とくに、成長期に無月経が起こると、骨密度を十分高めることができず、将来的な骨粗しょう症リスクが高まります。
骨粗しょう症によって、骨がもろくなると、疲労骨折などにつながります。
不妊症

無月経の影響として「不妊症」があります。
妊娠するためには、ホルモンが分泌されて、排卵すること、子宮内膜が厚くなることなどが必要です。
無月経の状態では、月経に関係するホルモンが十分分泌されていないことが多いです。
また、受精卵が着床するために子宮内膜が厚くなる必要がありますが、それも不十分なことが多く、不妊症につながるケースも少なくないです。
無月経の治療
適切な食事

女性アスリートの無月経の治療として「適切な食事」があります。
「利用可能エネルギー不足」によって月経に関与するホルモンバランスが乱れて「無月経」がおこります。
運動量に見合ったエネルギー量を食事から摂取することが大切です。
アスリートは日々のトレーニングによって消費エネルギーも増大しています。
しっかりと運動量に見合ったエネルギー量を食事から摂取することが大切になります。
エネルギー量が足りないようであれば、3食以外にも間食をとるなどの工夫も必要です。
女性アスリートの無月経の治療として「適切な食事」をおこないましょう。
適度なトレーニング

女性アスリートの無月経の治療として「適度なトレーニング」があります。
「利用可能エネルギー不足」によって月経に関与するホルモンバランスが乱れて「無月経」がおこります。
トレーニングのやり過ぎによってエネルギー消費量が多くなると、「利用可能エネルギー不足」によって無月経が起こります。
食事からのエネルギー摂取をしても無月経が持続するときには、トレーニング量を減らして、エネルギー消費量を減らすようにしましょう。
女性アスリートの無月経の治療として「適度なトレーニング」をおこないましょう。
低用量ピル

女性アスリートの無月経の治療として「低用量ピル」があります。
食事や運動を改善しても、無月経が持続する場合には、低用量ピルによって月経を整えます。
女性アスリートの無月経は、「利用可能エネルギー不足」から来るものがほとんどなので、食事や運動を見直すことが第一優先となります。
それでも、無月経が持続する場合には、他に原因疾患が隠れている場合があります。
女性アスリートにおいて「多嚢胞性卵巣症候群」(PCOS)が見つかるケースは多いです。
妊娠を希望する場合は、「クロミフェン」や「シクロフェニル」などの排卵誘発剤が使用されますが、「ドーピングの禁止物質」に指定されているので、原則使わないようにします。
「多嚢胞性卵巣症候群」による無月経の場合には、「低用量ピル」や黄体ホルモンの周期的な投与である「ホルムストローム療法」による治療が行われます。
女性アスリートの無月経の治療として「低用量ピル」などがあります。
その他
女性アスリートの無月経の治療として「ホルモン補充療法」「内分泌的治療」「心療内科的治療」などがあります。
無月経の原因として「卵巣機能低下」がある場合には、「エストロゲン」や「プロゲステロン」などのホルモンを補充する治療などが行われます。
また、妊娠を希望する場合には、「体外受精-胚移植」などの不妊治療などが考慮されます。
甲状腺ホルモン異常などの「内分泌異常」がみつかった場合には、甲状腺や代謝内分泌科など専門医による診察を受けるようにしましょう。
ただし、いずれの治療も「ドーピング禁止物質」に当たらない薬を原則使うようにします。
また、「精神的ストレス」や「摂食障害」などが疑われる場合には、精神科や心療内科など専門医による診察や治療を受けるようにしましょう。
女性アスリートの無月経の治療として「ホルモン補充療法」「内分泌的治療」「心療内科的治療」などがあります。
この記事のまとめ
今回は「女性アスリートの無月経」について説明しました。
・アスリートは、月経が来ないのは当たり前だ!
・体重が増えたら、動きが鈍くなる…
・疲労骨折するくらい練習しなければ!?
などと間違った考えの指導者も多いのも事実です。
無月経から骨粗しょう症になり、疲労骨折などのケガにつながる可能性があります。
トレーニングがしばらくの間できなくなり大変キツイ時期を過ごすことになります。
また、無月経から、不妊につながるケースもあります。
若い世代のアスリートが、長くスポーツを楽しめるように、ご自身の体を大切にして頂ければ幸いです。
この記事によって「女性アスリートの無月経」について理解が深まり、一人でも多くの人に役立つことを願っています。
この記事の著者
